コーヒーの産地と特徴

【必見】お手頃で個性的、コーヒー初心者にオススメのエチオピアの生産地を解説!

Arisa
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アラビカコーヒーの母国

アラビカコーヒーの母国といえば、みなさんどこをイメージするでしょうか?ブラジル、コロンビア、ガテマラ?いいえ、実はエチオピアです!

この記事では、エチオピアのコーヒーについてプロのバリスタである滑川京子氏に執筆いただきました。

エチオピアのコーヒーをまとめてみると

エチオピアのコーヒーについて、まとめ
早見表

①世界での生産ランキング
⇒5位

②栽培品種
⇒アラビカ種が100%

③詳細品種
⇒モカ種、エチオピア原生種、ゲイシャ種

④収穫時期
⇒11月~2月

⑤生産処理
⇒ナチュラル、ウォッシュト

⑥味の特徴
⇒赤い果実、赤ワイン、マスカット、ピーチ、ハーブティー、レモンティー、柑橘、ジャスミン、ベルガモット、アールグレイ

他の特徴

コーヒー発見について一番有名なのはヤギ使いのカルディについての話です。「9世紀ごろにヤギ使いのカルディがいつものようにヤギの放牧を行っていると、コーヒーの実を食べたヤギが飛び跳ねるなどの興奮状態になり、夜になっても眠らなかった。

それを見たカルディはこの実には何か特別な効能があるのでは?と思い修道院に持ち帰り、茹でて飲んだ」というのがコーヒー発見の有名なお話です。

そんなコーヒーの母なる国、エチオピアについて、今回はあまり知られていないコーヒーの取引価格のことについても触れてご紹介します。
最後には美味しいコーヒーの淹れ方についてのレシピ付きです!

エチオピアのコーヒーが栽培される環境について

エチオピアは東アフリカに位置し、東がソマリア、南がケニア、西が南スーダン、西北がスーダン、北がエリトリア、北東がジプチに囲まれた内陸国です。

エチオピアの国土は日本の約3倍にもなりますが、人口は日本より230万人多いくらいです。
公用語はアムハラ語を使用しておりエチオピア国内どこでも通用しますが、逆に欧米系の言語はまったく通用しません。

これは、欧米系の国家がアフリカへの侵略を試みた際、エチオピアは独立国家を守りきったという画期的な出来事に由来しています。
国名の由来はギリシャ語で「日に焼けた人」という意味であり、本来はアフリカ大陸の広範囲の人々を指していました。

エチオピアの国土は大部分がエチオピア高原を中心とする高地となっており、年の平均気温は13度と冷涼です。

コーヒーが栽培される標高

首都のアディスアベバは標高2,400mに位置しており、国内でもっとも標高の高い地点では4,500mにもなります。エリトリアがエチオピアから1991年に独立したことにより内陸国となりましたが、紅海、アデン湾まではほんの70kmほどの距離です。

エチオピア高原は本来平らだったが標高が高く降雨が多いことにより侵食され、非常に深い谷や崖が多くなりました。これが外国勢力からの防衛に最適で、植民地化されなかった理由でもある一方、交通インフラの原因ともなっており、経済発展を妨げている要因でもあると言われています。

気候は熱帯に位置しますが、標高によってかなり気温が異なり、以下の3つに分けられます。

  1. 標高1500m未満 平均気温が27度から50度
  2. 標高1500m以上2400m未満 平均気温16度から30度
  3. 標高2400m以上 平均気温16度

降雨について

エチオピア高原の降水量は多く、年間降雨量は1200mmを超します。
この豊富な降雨量がエチオピア高原にゆたかな植生をもたらし、また農耕もおこなわれ、アフリカ第2位の人口を支えている他、東アフリカの貯水庫と呼ばれるほどに湖や川を多く形成する源となっています。

雨季は6月半ばから9月半ばまでで、東部の高原は乾燥しており、オガデン地方はかなり暑く乾燥しています。
コーヒーは南部のシダモ地方、カファ地方が主な生産地です。
栽培品種は100%アラビカ種ではありますが、長年に渡り自然交配を繰り返したため詳細を特定をすることは困難であり「モカ種」「エチオピア原生種」と呼ばれています。

この長年に渡るアラビカ種同士の自然交配が、エチオピアのコーヒー豆のフレーバーに多様性を産み出しているとも言われています。

精製処理方法について

精製処理法は一昔前まで、果実がついた状態で乾燥させるナチュラル精製が一般的でした。ナチュラル精製の豆は、ベリーや赤ワインなどに風味を例えられることが多く、イエメン同様に「モカフレーバー」としてエチオピア・イエメンを代表するフレーバーとして愛されてきました。

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今では、果実を水で綺麗に取り除いてから乾燥させるウォッシュト精製も広く行われるようになり、マスカットやハーブティー、レモンティーのようなすっきりと爽やかなフレーバーの豆も多く流通するようになりました。

エチオピアのコーヒーのグレード・等級について

エチオピアの等級・グレード

グレードは基準量(300g)中の欠点豆数によって決まります。

G1 0~3個
G2 4~12個
G3 13~27個
G4 28~45個
G5 46~90個

G1が適応されるのはイルガチェフェ地区のウォッシュト精製の豆のみと規定されているため、ナチュラル精製の最高等級はG2なります。

グレードは実際にはG8までありますが、輸出される基準はG5までです。

欠点豆とは生の状態で少し緑みの強い未熟な豆(クエーカー)や茶色に褐色した熟し過ぎの豆(発酵豆・サワービーン)、割れ豆、虫食い豆などのことを指します。

クエーカーは焙煎をしても豆自体の成分が完成していない為、メイラード反応が弱く、色が他に比べてかなり明るくなります。

しかし、サワービーンについては焙煎後の見分けは難しくなるので、焙煎前のピック(欠点豆の除去作業)が大切です。

なぜモカコーヒーと呼ばれるのか?(モカブランド)

モカブランドについて

エチオピアの豆は現エリトリアの港から対岸のイエメンに渡り、イエメンのモカ港から世界各国に輸出されていました。

その為、「モカ」とはエチオピアの豆のことだけではなく、モカ港から一緒に輸出されていたイエメンの豆のことも指します。

厳密にはモカの後ろに地域名がつき、イエメンのモカは「モカ・マタリ」、エチオピアのモカは「モカ・ハラー」「モカ・シダモ」「モカ・リム」などと呼ばれていました。

昔はイエメンの豆が単体で飲まれることが多かった一方で、エチオピアの豆はブラジルの豆とブレンドされて「モカブレンド」として、飲まれることが多かったそうです。
その時の名残から、現在もエチオピアの豆は「モカ」と呼ばれています。

スペシャルティコーヒー、フェアトレードの普及

モカは「世界最古のコーヒーブランド」であり、現在も使用されているコーヒー界の重要なワードのひとつです。
しかしながら、そのモカを生産しているイエメンやエチオピアのコーヒー農家では決して裕福な暮らしというものはできていません。

その大きな要因は農作物の取引価格というものが農家の意思と関係なく、国際金融市場で決められてしまっているからです。コーヒー豆だとアラビカ種はニューヨーク、ロブスタ種(カネフォラ種)はロンドンの取引所で先物取引として価格が決定します。

ゆえにコーヒー農家が「例年以上に手間暇かけて栽培したけど不作だった」「今年は最高のフレーバーのコーヒー豆が収穫できた」と主張しても反映されることがないのです。
そればかりか、国際金融市場で価格が大幅に下落した場合、農家にとっては死活問題となります。

栽培にかかっているコストを継続的に適正に得ることができなければ、栽培は続けられなくなってしまいます。
それではせっかく世界各国で愛されている「モカブランド」も後世に継承することは出来ません。

そこを大きく変えたのが、「フェアトレード」と「スペシャルティコーヒー」です。
フェアトレードとは直訳すると「公平な貿易」です。

フェアトレードの一番重要な特徴は国際金融市場の取引価格に関係なく、「最低取引価格が保証されている」ということです。

条件は幾つもありますが、フェアトレード認証をされれば国際金融市場で例え値が大幅に下がったとしても、取り決められている最低取引価格以下になるということはありません。

それにより、コーヒー農家が極端な貧困に悩まされることが軽減される様になりました。
それよりも更にコーヒー農園を豊かにしたのが「スペシャルティコーヒー」です。

スペシャルティコーヒーとは国際審査員が行うカップングにおいて、スコアシートの評価が80点以上のコーヒーのことを指します。

簡単にいえば「とっても美味しいコーヒーであるということが専門家によって保証されたコーヒー」のことです。
更にはどこの国のどこの農園で誰がどんな品種を栽培、収穫、精製、選別、品質管理したのかということ、どんな流通経路で手元に来たのかということが追跡可能であること。

そして、自然環境を尊重し、今後も同じクオリティのコーヒー栽培が継続可能であるということがスペシャルティコーヒーを名乗るための大切な定義になっています。

よって、「ただ美味しいコーヒーである」というだけではダメなのです。
では、スペシャルティコーヒーとして認められると何がいいのか?

それは、「美味しさが保証され、詳細情報がしっかりと追跡でき、今後も美味しいコーヒーの栽培が可能」なことから、バイヤーと農園が直接取引(ダイレクトトレード)をするようになったことです。

それにより農園は「これだけの手間隙をかけて作って、これだけ美味しいんだから、これくらいの価格で買ってよ!」という主張ができるようになったのです。
また、生産国ごとに行われているCOE(カップ・オブ・エクセレンス)という品評会において国際審査員のスコアシートの評価が85点以上を獲得したコーヒー豆に関しては「全世界のバイヤーがオークションで落札」をしますので、品評会で上位を獲得したコーヒー豆は夢のような価格まで高騰します。

このような取り組みによってコーヒー農家の貧困は従来と比較すると改善傾向にあり、エチオピアでも今日まで愛される「モカブランド」というものを継続することが出来ました。

エチオピアの代表的な産地、農園

【日本1位】ロクメイコーヒーのエチオピアを見る

エチオピアはブラジルのような大きな農園ではなく、たくさんの小規模な農園によってコーヒーが栽培されています。その中でも有名な地域、農園として下記が挙げられます。

カフェ地方 ゲイシャ種の発祥の地であるゲシャ村があります。
シダモ地方 ジ地区(シャキッソ)、イルガチェフェ地区(アリチャ、コチャレ、ゲデブ)など有名な地域、農協がたくさんあります。
ハラール地方 カでとても有名なモカ・ハラー栽培の地です。

近年日本で一番流通しているのはシダモ地方のコーヒー豆ではないでしょうか?
精製方法もウォッシュト・ナチュラルともに行われており、質もとても高く、多数の豆がスペシャルティコーヒーのランクに位置付けられています。

シダモ地方のイルガチェフェ地区では小規模農園が収穫した豆を持ち寄って精製、出荷している「コンガ農協」もとても有名です。
近年、コーヒー業界でよく耳にする「エチオピア・ネキセ」は地域名や農園名ではなく、ナインティ・プラス社の作った商標名であり、特定の強烈な風味が現れるようにコントロールしナインティ・プラス社が命名しています。

ゆえに使用されている豆の生産地域は年によって違いますので、「今年のネキセはここの地域の豆」という表現になります。

スターバックスで販売されているエチオピア

スターバックスではエチオピア同士の豆をブレンドしたコーヒーが販売されていますが、内容はシダモ地方産の強い酸味が特徴の豆とリム地方産の酸味が穏やかでダークココアの様なコクとほのかなスパイスを感じる豆のブレンドです。

バランスがいいので、万人が楽しめるコーヒーとなっていますので、酸味の強いコーヒーが苦手なエチオピア初心者にオススメです。

ちなみにエチオピアで一番有名なカフェといえば、首都にある老舗カフェの「TOMOKA(トモカ)」です。

TOMOKAとは「焙煎、最新、コーヒー」の単語の頭文字から取っています。
それまで「コーヒーは家で飲む」という文化だったエチオピアに「外出先でコーヒーを飲む」ということを広めたお店です。

2015年に東京の代々木上原に日本1号店がオープンしましたので、ご興味のある方はお天気のいい日に代々木公園でお散歩がてら行かれてみてください。

⇒TOMOKAをチェック

エチオピアのゲイシャとゲシャビレッジについて

エチオピアのゲシャビレッジ

コーヒー業界に旋風を巻き起こしている「ゲイシャ」というコーヒーをコーヒー通の方は、一度は耳にしたことがあのではないでしょうか?

プロが解説するコーヒーのゲイシャとは
【プロが監修】コーヒーのゲイシャとは?世界で一番わかりやすく解説 最近は、さまざまな場所でゲイシャが楽しめるようになりました。しかしゲイシャが今でも特別なコーヒーであることに変わりはありません。...

その風味はジャスミンやベルガモットの様な華やかで甘い香りの花やアールグレイなどの香り高い紅茶に例えられることが多く、飲むと「コーヒーの風味」という概念が180度変わってしまうような強烈なインパクトを持っています。

過去に「パナマ」の回でも私も少し紹介させてもらいました。

パナマのコーヒー豆について解説
【バリスタ監修】ゲイシャ種で有名「パナマ」のコーヒーの味や特徴を知ろう!この記事は2018年10月18日に最新の情報へ更新されました。 ゲイシャ種はコーヒー業界でもっとも注目されている品種で、年...

実は、このゲイシャはエチオピアが原産地であり、「ゲシャビレッジ」という村の木が原種なのです。

ゲシャという村名がなまって現在のゲイシャという品種名になったそうです。
エチオピアではコーヒーノキが昔の日本でいう「どんぐりの木」の様な存在で「どこにでも自生している木」という存在、更には生産性の悪さや収穫の手間、ジャングルの奥地に位置してることから、ゲイシャ種はそこまで重要視されていませんでした。

しかし、現在ではパナマのラ・エスメルダ農園で注目されたことにより世界各国からの需要も高まり、環境も整備され、かなり生産量が多くなりました。

ゲイシャ好きの方は「エチオピア/ゲシャビレッジ」と表記されている豆を発見した際には、ぜひ一度飲んでみてください。
パナマとはまた一味違うエチオピアの風味のゲイシャが味わえます。

伝統的なコーヒーセレモニーとは

エチオピアのコーヒーセレモニー

エチオピアや旧エチオピアであるエリトリアでは、コーヒーセレモニー(カリオモン)と呼ばれる伝統的な儀式があります。
これは日本の茶道のようなもので他者に対するおもてなしの意を込めて行うものです。エチオピアでは嫁入り前の女性が必ず覚える花嫁の必修項目だそうです。

セレモニーではまず生豆を煎るところから始まり、三杯まで飲むのが一連の流れとなっています。その為、おおよそ2時間もの時間を要するそうです。

また、杯数により呼称も変わり、一煎目のコーヒーをアボル、二煎目をトーナ、三煎目をバラカ(祝福)と呼びます。

なぜ塩を入れる?

このセレモニーではコーヒーに塩を入れて飲むのが一般的だそうです。
これはエチオピアのコーヒーが標高が高いことにより酸味の強いコーヒーになることに起因しており、塩を入れて飲むことにより抑制効果が生まれ、酸味を感じにくくすることができるからです。

抑制効果とは人の感じる5つの味覚のうち2つ以上の味覚を感じると、片方がもうひとつの感じ方を弱くする作用のことをいいます。
エチオピアの方たちはこのことを体感的に知っていて、行ってきたのでしょう。
古くからの知恵には驚かされることがたくさんあります。

残留農薬問題について

残留農薬問題

2008年、エチオピアから輸入されたコーヒー豆から残留基準値を超える農薬が検出され、日本中のカフェや喫茶店でエチオピアのコーヒーが品薄になる出来事がありました。

これを機に日本はエチオピアからの依頼で、共同でこの問題の打破に向けチームを立ち上げ、残留農薬検査機能の強化を図りました。

現在、私たちがエチオピアのコーヒーを美味しく安全に楽しめているのは、問題の打破に向け迅速に行動したエチオピア政府、真摯に取り組んだ研究チーム、指導育成チームのおかげであるということは忘れてはいけません。

エチオピアのコーヒーのオススメ飲み方レシピ

コーヒードリップ

最後にエチオピアのコーヒーを美味しく飲むためのオススメのレシピについてご紹介させて頂きます。

エチオピアは爽やかな酸味や芳醇な果実味を残すため、また豆自体が他国の品種と比べるとかなり小粒で焦げやすいことから、浅煎りに焙煎されていることです。

その浅煎りの特性を生かす淹れ方のコツです。

コーヒーのドリップのコツ
【プロに聞く】浅煎りから中煎りのコーヒーを美味しく入れるドリップレシピ!浅煎りから中煎りのコーヒーを淹れるときに役立つドリップのコツをプロのバリスタに教えて頂きました。教えてくださったのはハンドドリップの大会で準優勝されている滑川京子氏です。...

Arisa
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いかがでしたか?
コーヒー初心者でも味が分かりやすいエチオピアの味わい。私も大好きです。
ぜひ楽しんでくださいね。

ABOUT ME
この記事の執筆/滑川 京子 氏(バリスタ)
この記事の執筆/滑川 京子 氏(バリスタ)
Felicemente代表。 小さな焙煎所、カフェチェーン店、バー勤務、イベントでのバリスタ業務、家電量販店でのマシン販売など様々な実務経験を経て、現在は子育てをしながらフリーランスのバリスタとして活動中。 『日々の生活を少し豊かにするお手伝い』をコンセプトに初心者向けのセミナーや子ども向けのセミナー、イベント出店などを主に行っている。 【所有資格】 ■日本バリスタ協会(JBA)認定バリスタ ■イタリア国際カフェテイスティング協会(IIAC)認定 呼称:エスプレッソ・イタリアーノ・テイスター 【実績】 ■日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)主催 ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ(JHDC)2018 2nd place(準優勝) ■デロンギ・ジャパン株式会社 電気カフェケトル ブランドアンバサダー